幸福の資格

待ち望んでいたはずの週末があっけなく終わる。
ただひたすら週末の到来を待ちわびるだけの平日と、いざ到来したところで何もせず不毛に過ぎる週末。
そんな毎日。
結局、人生後半のしあわせを手に入れるためには資格が必要なのだ。そしてその資格は才能、努力、運、それぞれの積み重ねによっておそらくは20代までに得られる。
得られなかったひとびとは、基本的に足切りだ。よほどの強運の持ち主以外は、終生得られることはない。
思えば希望の職業に就けなかった新卒のときすでに、その資格を失っていたのかも知れない。
歳を食うたびに、少しずつ夢を捨ててきた。多芸(というほど多芸ではないが)は無芸を地で行く俺にとってそれは、社会との関わりが増えるにつれ削られて行く時間の中でより充実した未来を目指すための、やまれぬ選択だった。
しかし箱に残った最後の希望ですら、結局花開くことはなかった。
ならば仕事は食うためと割り切って、趣味に生きようと決めた22の春。
まだ若かった。若すぎた。
趣味の同人活動は発行部数数十部単位の零細サークルではあったが、ある程度までは部数を伸ばし、それなりの社会的しあわせを得ていた。しかしそんなものはものの数年で頭打ちとなった。
やがて成年向けへ手を出し始め、以前と比較して飛躍的な発行部数となるが、そこでもそれはすぐに頭打ちになった。
部数を出すだけなら流行りものに食いつくとか、いくらかやりようはあっただろうが、それでは趣味でなくなってしまう。
結局、趣味だけでは刹那的なよろこびを超える社会的しあわせを得ることはできないことに気づいたのは10年経ってからだった。
今ではもう、何もかもが遅い。


コミケまでもうあと3週間足らず。
たぶん新刊は出ません。