ひげよさらば

ねこが逝ってしまった...
まとも歩けなくなってから4日。思い出したように寝床から起き出してはちょっとずつ水を飲むだけになり、けれど最期は眠ったまま、舞い落ちたひとひらの雪が地面に溶けていくように、穏やかに息を引き取った。


家族の一員となることが決まってから、雌猫であることだし避妊手術をと連れていった医者から、もう10歳は越えてる年寄り猫ですよと笑われたのがかれこれ12〜3年ほど前になるだろうか。
年寄りだからかあまりやんちゃはしない猫だったが、まんがの原稿の上に陣取りたがるので同人作業中は自分の部屋をねこ出入り禁止にしたのは大学生の頃だった。
一緒に飼っていた犬とはついに仲良くなることはなかったが、それでも犬が病気で亡くなったときは、猫なりの理解があったのか、心配そうに寄り添ってじっと見つめていたものだ。
最初から牙は1本抜け落ちていたが、長年暮らすうちに残りも1本、2本と抜け、見るからに老猫の風格を漂わせながらも、日常のストレスに癒しを与え続けてきてくれたねこだった。


野良出身のくせにえらく臆病でおとなしく、ひなたぼっこ以外はほとんど家から出ることもなかった家猫としては、天寿を全うし、暖かい部屋で家族に見守られながら旅立つことができたのは、上出来な幕切れと言っていいのではなかろうか...と思いたいのは人間のエゴだろうか。
看取る側としても、素人目にもあきらかにまずい状態になってから、残業もスロもすべて否定し定時ダッシュでの帰宅を続けていた甲斐があったというものだ。


でも、やっぱり、さみしいよね......
どうか安らかに。